Q & A

令和6年度(秋期)放射線安全管理研修会Q&A(講演者からの文書回答)

 
 

1.

2つ質問させてください。
「線量限度の精緻化」は医療以外の分野でも議論が増えているのでしょうか。もしあれば他にはどんな分野でしょうか。
生態系サービスのようなグローバルな話であれば、日本としてはどのような対応になることが予想されるのでしょうか。

     

  1. 「線量限度の精緻化」は[線量評価の精緻化」の聞き間違いかと思います。医療では毎日のように行われいる放射線診療データからより患者個人に応じた線量評価の動きがあります。この問題を紹介しました。
  2. 一般に実施されている環境保護の取り組みを放射線の環境防護にいかに適用するかが議論されています。日本においても今後、環境防護のあり方から議論をしていく必要があるでしょう。

回答者:甲斐先生

 

2.

これからの原発事故を想定する時に、広島・長崎の被爆者等のアルファ、ベータ、ガンマ線核種の体内蓄積のデータが必要ではないか。チェルノブイリ原発事故の場合、福島事故の場合はアルファ、ベータ核種はどうだったか。飲食物摂取制限をしなかった時の体内蓄積データを備えておく必要があるのではないか。

     

原爆投下時には体内放射能を検査測定する技術はなく、チェルノブイリと福島では体外計測法によるガンマのデータが一部存在し、アルファとベータはほぼありません。

回答者:松田先生

 

3.

緊急時モニタリングにドローン計測はシステム内に考慮されているか。またKURAMAシステムを使うことができるのか。

     

ドローンについては知りませんが、当然入ってくるべき技術だと思います。走行サーベイデータのモニタリングシステムへの接続は自治体レベルではすでに行われています。

回答者:松田先生

 

4.

例えば原子力PR館を改造して、通常時はPR館、非常時に避難、医療の場所等に変更するフェーズフリーのシステムは可能か。

     

可能かどうかは事業者マターです。そのアイデアに実効性がありそうであれば、検討してもらいたいところです。

回答者:松田先生

 

5.

内閣府の自然災害用のSOBO-WEBシステム(官民情報共有システム)との連結は可能か。

     

知りません。オンラインクロノロシステム(NISS)についてはすでに内閣府と原子力規制庁で共有されています。

回答者:松田先生

 

6.

原子力災害が発生した時に複合災害であれば、停電や断水を伴う可能性がある。医療を考えると、非常用発電船や非常用発電トラック等の準備はあるか。

     

船は知りません。発電トラックは原発敷地内に準備されていますが、あくまで敷地内運用です。おっしゃるような複合災害への対応はなされていません。

回答者:松田先生

 

7.

医療体制について、テロ等に対処できる体制はあるか。

     

原因が何であれ原子力災害時の医療体制は述べた通りです。それ以外の例えば化学テロや生物テロについては以前より厚労省が取りまとめています。

回答者:松田先生

 

8.

プラットホームに東大、京大、名大、九大、北大等は加わっていないのか。呼びかけしないのか。

     

ご指摘いただいた大学の中にはすでに声をかけた施設もありますし、これからという施設もございます。また、加速器があってもRI製造を行っていない施設もありますし、RI製造を行っている施設でも何らかのご事情で参加を見送られたケースもありました。研修会での講演の通りプラットフォームからのRI供給能力はひっ迫しており、参加する施設を増やすことは課題です。今後も努力して参ります。

回答者:神田先生

 

9.

最近医療用RIで従来なじみのなかった核種が多く出てきてRI手帳に載っていないものも多い。短寿命核種や医療用核種のデータベースやハンドブックはあるか。

     

近年利用されている核種の動向については、日本アイソトープ協会のRI製造・利用調査報告書(https://www.jrias.or.jp/report/cat1/311.html)に記載されております。

回答者:神田先生

 

10.

体内の微量元素(Zn、Mg、Al等)の挙動把握のためにトレーサー研究等の可能性はあるか。微量であれば岡山大学のラドン研究のようなホルミシス効果、アルツハイマー型認知症等の研究に使えないか。

     

Zn-62、Mg-28 は供給可能です。当プラットフォームから供給可能な核種のリストは https://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~ripf/info/ri.html にございまして、これらの2核種はこのリストに載せております。一方、Alの放射性アイソトープのうち比較的長寿命なAl-26については、長寿命であるがゆえに加速器で製造できる放射能がそれほど高くないことから利用は困難ではないかと思われます。

回答者:神田先生

 

11.

At-211が患部に集積する割合はどのくらいか。もし100%でないとすると、正常細胞にも相当のダメージがあるのではないか。At−211の体内被ばく線量評価が患者のQOLにとって必要ではないか。今、放射線治療において青手帳制度がないのは問題と思っている。

     

資料の21ページに示したマウスの場合は集積する割合は投与後3時間で22.5±10.4%、24時間で12.9±6.8%とのことです。マウスの他の臓器への影響については、50 MBq/kg の投与で一過性の骨髄抑制、精巣・腎臓の一部に病理変化があったという結果が論文で報告されています。また、At-211の人への投与計画の一環として、人の各種の臓器における吸収線量の検討を行った論文も発表されており、治験に向けて細心の注意を払った準備が行われております。
医療における放射線の利用の進展に伴い、被ばく歴の管理は重要になってくると思われます。

回答者:神田先生

 

12.

短寿命RIの搬送にヘリ等の利用の可能性はあるか。

     

アイデアとしては非常に興味深いです。大阪大学病院で運用しているドクターヘリは救急救命が最大のミッションですので、基礎研究用のRI輸送に使える見込みはありません。一方、チャーター便として商用運航しているヘリコプターはあるようですので運賃とRIの寿命の兼ね合いで、運賃は利用者負担として検討いただくことになろうかと思います。

回答者:神田先生

 

13.

素晴らしい仕組みだと思いますが、RI供給を受けるための経費(製造・運搬等)はどうなっているのでしょうか。

     

製造費用は基本的にプラットフォームで負担いたします。ただし、非常に高価なエンリッチ標的などは提供していただく場合があります。また、輸送費については混載便で数千円、チャーター便で10万円程度です。これはケースバイケースで、利用者に負担していただく場合もあれば、プラットフォーム側で負担する場合もあります。

回答者:神田先生

 

14.

利用を分野で分類すると割合はどうなるでしょうか。医学系が圧倒的に多いのでしょうか。

     

利用された研究分野の分布は、医薬学が40%、化学が30%、物理、工学、農学がそれぞれ10%です。

回答者:神田先生

 

15.

当該核種を初めて利用する場合はRI法で許可をとる必要がありますが、使用許可申請や測定法、管理方法に関して、RIPFはどのような支援をされていますか。

     

これまで利用されてきたみなさまには法規、管理、計測に関する支援をしてきたことはありませんが、私たちの中には管理や計測を専門としている研究者が多くおりますので、ご助言することは可能です。使用許可申請に関する助言も可能です。

回答者:神田先生

 

16.

At-211が要望の1/3しか供給できていないとのことですが、供給量はまだ余裕があるのでしょうか。

     

現状では供給能力に余裕はありません。当面はプラットフォームに新規に参加いただく施設を増やすことで供給能力を高めることを検討しております。また、災害等からの復旧作業中の施設の稼働、大阪大学においては新規加速器の稼働によって将来的に供給能力を増強することになると考えております。

回答者:神田先生

 

17.

アミノ酸から、タンパク、RNAへと合成される過程と逆の過程、RNAからタンパク質への分解等の反応等は考えられているのでしょうか。

     

有機物は,合成反応よりむしろ分解反応の方が進みやすいです。このため,せっかく初期地球に存在した有機物も,「生命」が誕生しなければ,分解し,最終的には二酸化炭素や炭素粒子などになってしまいます。生命が誕生すると,分解するより早く有機物を合成されるシステムが成立するため,今日まで有機物が存在し続けていると考えられます。

回答者:小林先生

 

18.

放射線利用でグラフト重合技術が良く使われえていますが、生命誕生の場合にもこのようなことが起こって現在の進化につながっていることもあり得るのでしょうか。

     

タンパク質やRNAのような「きれいな」分子ですと,放射線によって壊れたり,べつのものが継ぎ足されたりすると,機能が失われますが,「がらくた分子」ですと,グラフト重合のようなメカニズムで接ぎ木がされ,新たな機能をもった分子が生じることは十分に考えられます。

回答者:小林先生

 

 
 


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